ども、ぽこラボ所長です!
今回は伊藤和夫著の英文解釈教室について解説します。
本書は1977年に初版、1997年に改訂版が出て、その後内容は大きく変わることなく、ずっと日本人に愛され続けてきた参考書です。
当時から(一応)受験用参考書として位置づけられてはいますが、2022年現在、大学受験生全員におすすめできるわけでもないので、そのあたりも踏まえて解説していこうと思います。
この記事の内容は以下の通り。
- 英文解釈教室がどんな本か
- 英文解釈教室のレベル、おすすめできる人
- 透視図やビジュアル英文解釈など他の参考書との違い
- 通読にどれくらい時間がかかるか
- 英文解釈教室の使い方徹底解説
それでは見ていきましょう!
目次
英文解釈教室がどんな本か
英文解釈教室は駿台で教鞭をとっていた伊藤和夫氏による受験用参考書で、分野としては英文解釈の参考書となります。
今の版ではソフトカバーの2分冊になっていて、本体は「短文の例文」「解説」「50語~200語程度の英文の例題」が収録、別冊は「例題の和訳」「詳細なIndex」が収録されています。
本体は次の写真のように、単文による例文と解説がズラッと続き、

その後、節のまとめのような形で次のような例題が続きます。

例題の後には文章の解説がありますが、きれいな全訳は別冊に収録されているのでそちらを見ながら読む形になります。
英文解釈教室で取り扱われているテーマは次の通り。


本体が311ページ(+はしがき&目次)、別冊が66ページになっています。
英文解釈教室のレベル、おすすめできる人
次にどれくらいのレベルなのか、そしてどんな人におすすめできるのか説明していきます。
英文解釈教室のレベルは?最難関大学入試レベル
レベルは大学受験で言うと入試最難関レベルです。
京大などのかなり難しめの和訳問題などを楽々クリアできるようになるレベルと思っておくといいでしょう。
入試から離れて一般的な英語で言うと、京大入試レベルの難しい文章は、一般的な書籍や英字新聞などを読んでいると普通に出てくるものではあるので、
今後ずっと英語を使い続けること(特に評論などをリーディングし続けること)が想定される場合は、普通に出来るようになってほしいレベルではあります。
難しさの理由は主に
- 遠い位置からの修飾、複雑な修飾が多いこと
- 語彙が難しい文章が多いこと
の2つになります。
英文解釈教室が目指すのは「直読直解」で、英語を頭から順に読んで、語順通りに理解していくことですが、
それが出来るようになるためには、多少、離れた位置からの修飾がある文章があっても、諦めずに読み続ける必要がありますよね。
そういったことが頭を使わずとも出来るようになるのがゴール地点に据えられているので、修飾語が遠くても前から順に読みたい人にとっては、いい練習になるかもしれません。
また、語彙も地味に難しいかなと思います。
特に大学受験程度の語彙レベルしかないのであれば、辞書は必須です。
難しい単語が頻発するというわけではありませんが、構造が難しい文章を読もうとするときに知らない単語が出てくると結構ダメージを食らってしまうものなので、そういった意味では通読のしんどさを感じる人も多いのではないかと思います。
とはいえ、これも辞書さえあればクリアできる程度のレベルなので、我慢強さや時間の余裕さえあれば問題はありません。
おすすめできる人
おすすめできるのは
- A判定が安定している時間のある受験生
- のんびり勉強を進めても問題ない社会人
のどちらかになります。
通読にはかなり時間がかかるので、一般的な受験生にはおすすめできません。
京大などの結構めんどくさい和訳を出題するような大学でも、英文解釈教室までやらなくても問題ないことの方が多いです。
A判定が安定していて、やることもなくなってきたな、、、という人だけチャレンジしてみてください。
B判定以下の人なら、他の内容や科目を勉強した方が点数にはつながりやすいものが多いはずなので、他のものを優先させることをおすすめします。
一方で、時間に余裕のある社会人の方にはかなりおすすめできる参考書になります。
この本だけでガッツリ前から読む練習をするのであれば、3周程度は最低でも読み返したいところ。
そのつもりでトライしてみてはいかがでしょうか。
実際この本で練習すれば、「前から読もうとする感覚」に関してはかなり自信がつくと思います。
迷ってる社会人の方はとりあえず買ってみて、最初の30ページだけでも読んでみるといいでしょう。
それで合わないなと思ったら、一旦積読しておきましょう。いつか読みたくなるタイミングが来るはずです。
透視図やビジュアル英文解釈など他の参考書との違い
最難関大レベルという意味で比較されるのは「英文読解の透視図」、英文解釈教室と同じ著者ということで比較されるのは「ビジュアル英文解釈」かなと思いますが、こういった参考書との違いについても軽く触れておきましょう。
英文読解の透視図と英文解釈教室
英文読解の透視図と英文解釈教室だと、量としてはやや英文解釈教室の方が多いかなというところです。
構文自体の難しさに大きな差はないと思いますが、受験生にとっては、量が多い少ないは結構大きな問題になるかなと思います。
量という観点で迷ったのであれば、透視図を選ぶことをおすすめします。
また透視図の方が少し長めの文章も入っていて、やや時代には合っている感じはしますが、それでも数百語程度なので、解釈本と割り切るのであれば、1文章の長さは気にするほどではないのかもしれません。
あとは正直好みの問題で、語彙や構文の難しさなどはめちゃくちゃ大きく変わることはありませんし、解説や文体の好みなどもあるので、本屋などで最初の数ページを見てから決めるといいでしょう。
ビジュアル英文解釈と英文解釈教室
ビジュアル英文解釈は英文解釈教室と比べると正直かなり簡単です。
多くの受験生にとっては、ビジュアル英文解釈レベルが出来ていれば問題ないですが、ビジュアル英文解釈を選ぶくらいなら、もう少し使いやすい参考書も最近は多いかなと思います。
レベル的には、高校1年生レベルくらいから共通テストレベルくらいまでがビジュアル英文解釈で、英文解釈教室は、スタート地点の段階でもう少し高いレベルから始まります。
なので、そのレベル感に合わせて使い分けるのがベストでしょう。
通読にどれくらい時間がかかるか
塾講師として教材を作る過程で、英文解釈教室を読み返してみました。
かかった時間は25時間くらいでした。(私の専門は物理でゴリゴリの理系です。)
10年くらい前、私が浪人生のときに2回程度通読していただけで、もうすっかり内容は忘れていたので、1周目のような感覚で読みました。
和訳を作ったりとか、そういった作業はせずに、教材づくりに使えそうなフレーズとか説明の仕方とかをメモしながら読んだだけなので、25時間でもかなり早いほうだと思います。
この参考書で丁度学べるものが多いレベルの人だと、読むだけではなく、「もっとガッツリ和訳も作って、、、」と進めると思うので、この3倍~4倍くらいの時間はかかってもおかしくはないかなと。
1周だけで75時間~100時間くらいを見積もっておくのがおすすめです。
受験生が3周くらいしようと思うと、英文解釈だけで使える時間はオーバーする可能性が高いので、受験生にはおすすめできません。
英文解釈教室の使い方徹底解説
最後に使い方について、簡単に触れておきます。
時間に余裕のある受験生や社会人を想定した使い方になりますが、それが以下の通りです。
- 英文だけを見ながら、構造と訳を考える(辞書利用可)
- 訳を紙に書き出す
- 解説&訳を読んで、英文を理解する
- 解説を思い出しながら、自分の言葉で訳を作り、模範の訳と比較する
- 直読を意識して音読を3回以上くり返す
- 1周終わったら2周目
まず、英文だけを見ながら英文の構造と訳を自分なりに考えましょう。
このときに、辞書を使うのはOK。
あくまでも構造をしっかり把握することが優先なので、語彙には手こずらないようにしたいところです。
自分なりに訳を考えたらそれを紙に書き出しておきましょう。
頭の中だけで処理していると、たとえ間違っていたとしても
「本当は模範の訳みたいに考えてた」
「そっちじゃないかなと思ってた」
「惜しかったな」
などと言い訳してしまって、意外と大事なことが頭に残りにくくなってしまいます。
書き出すことで言い訳根性を自動的に抑えられて、しっかり間違えることができるので、間違えながらしっかり頭に残していきましょう。
書き出したら、解説と和訳を読みます。
このときに間違えていた部分はしっかり認識できるはずです。
しっかり解説と訳を理解できたら、一旦それを閉じて、英文だけを見ながら解説どおりの訳を自分の言葉で再現できるか試してみてください。
この時にもぜひ紙に書き出してみるといいでしょう。
ちゃんと理解できていれば、すらすら書き出せるので、困ることはありませんんが、逆に分かったつもりになってしまっていたら、ここで和訳を作れなくて、困ってしまうはず。
分かったつもりになるのを防ぐためにも、これだけは絶対にやっておいてほしい内容です。
そして本書の目的である直読直解を目指すためにも、音読をしておきましょう。
最低でも3回程度は音読できるといいですね。
別に10回、20回と音読して1周で暗記してしまうくらいでも全く問題ありません。
ここまででおすすめの使い方は終わりになります。
ガッツリ、この本だけで直読直解を目指すのであれば、3周くらいはチャレンジしたいところ。
2周目以降は紙に書き出さずに「読む」&「音読」だけでも十分です。
1周目は75時間、2周目は50時間、3周目は25時間とだんだん時間が短くなるはずですが、それでも150時間かかる計算になるので、それくらいは覚悟して取り組んでみてください。
まとめ
今回は英文解釈教室について解説しました!
直読直解を目指す意味では、初版から40年以上たった今でも不朽の名作です。
時間はかかりますが、それでも直読直解をできるようになれば、リーディングで見える景色が変わってきます。
「辞書さえあれば、どんな文章でも読める」
そんな状態を目指して、ぜひチャレンジしてみてください!
それではまた、所長でした!